上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

PCR検査をわかりやすく その2「遺伝子の領域」

  さて、前回のラストで「単語毎に分けて、特定の単語をとにかくコピーしまくって『あ、この単語がこんなにたくさんコピーできた!だったらこの設計図は○○の設計図で間違いないね!』って調べるのがPCR検査」と書きましたが、ではなぜ態々「単語毎に分ける」必要があるのでしょうか?

 

 それでは遺伝子に書き込まれた文字を、「初めて会う人の自己紹介」に例えてみましょう。

「こんにちは、上杉アイクと申します。背骨があって血は赤色です。岐阜県在住で水や栄養を毎日摂らないといけません。好きな揚げはまん丸な形のやつで、職業は臨床検査技師で・・・

 

 待て待て待て!「背骨がある」だの「血の色は赤い」だの「水や栄養が必要だ」だのは当たり前のことだし、「好きな揚げ玉の形」なんてどうでもいい!その人を知るためには「岐阜県在住」ってことや「職業は臨床検査技師」ってことの方がよっぽど重要じゃないか!!

 

 って思いましたよね。

 前回「遺伝子とは、生物の性質を決定づける設計図である」と書きました。「という事は、同じ人間でも書き込まれている文章はガラリと違うはずだ」と思われがちですが、実際に遺伝子に何が書いてあるか(この「何が書いてあるか」をゲノムといいます)を調べると、同じ種族ならば書いてあることがほとんど同じなのです。

 上の自己紹介文で例えると、

「背骨がある」とか「血の色」とか「必要な栄養」とか、設計図にはそういった「種族の性質」を決める文章が大半を占めて、

「個人の性質を決定づける文章」というのは、ほんの僅かしかないのです。

 

 「人間」なら「人間」、例えば「猫」と言えば「猫」、「犬」なら「犬」以下略で、まず「種族としてベースになるテンプレート設計図」があって、その中に「個人を特定する文章」を当てはめられていて、「血液型を決める」ための数個の文字や、「肌の色を決める」ための数個の文字、「指の長さを決める」・「脂肪の付きやすさ」・「アルコールの処理能力」etc・・・といった具合に、長~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い「所属の性質を決める」文章のなかに「○○を決めるちょっとした文字」がパラパラ~っと散りばめられているのが遺伝子と言われるものなのです。

 

  で、武漢肺炎はよく「新型コロナ」って表現されていますが、このような表現だと「コロナウイルス」という名前の、全く新しいウイルスが湧いて出たような印象を受けますが、「コロナウイルス」というのは、「ウイルス」という括りの中のでは非常に細かい違いしかないのです。

 どのくらい細かいかというと・・・

1:「ウイルス」という括りがある

2:「DNAウイルス」と「RNAウイルス」という括りがある

3:武漢肺炎ウイルスは「RNAウイルス」の中の「コロナウイルス一族」の一人のようなもの

4:「コロナウイルス一族」の大半は害が小さいけれど、中国の武漢帰りでとりわけヤンチャな一家が「武漢肺炎ウイルス」

5:それぞれの武漢肺炎ウイルス

 と、細分化されているのです。

 

 はい、それで武漢肺炎ウイルスをPCR検査で検出しようとした場合、どういった処理が必要なのか?

 遺伝子の中では「種族を決定づける文章」が大半でした。つまり、武漢ウイルスの中には、

・ウイルスという種族の情報

・RNAウイルスという種族の情報

・「コロナウイルス一族」としての情報

武漢ウイルスを決定づける情報

武漢ウイルス個体ごとの情報

という5種類の情報があります。

 ここまで読んでいただければ、なんとなくわかっていただけると思いますが、「このウイルスは武漢ウイルスである」と断定できる情報ってのは極めて少なく、例えてみれば、A3の神にびっっっっっっっっっっっっしりと文字が書かれた文章が2枚あったとして、それを比較して「ほら、1枚目の『精進』ってところが2枚目は『研鑽』になってる違いがあるでしょ?だかこの2枚は全く違う文章として扱うんだよ」っていわれているようなもので、PCR検査というのは、この「研鑽」の部分を見つけて大量にコピーしないといけないのです。

 そうなると、この2文字以外の、全く同じ文章は必要ありませんよね?

 だったらこの必要ない文章を、何らかの方法で単語として認識できなくすれば「研鑽」という文字をものすごく見つけやすくなるのです。

 それを行うのが「制限酵素」です。この「制限酵素」ってのはいろいろ種類があるのですが、要は「文字情報としてのDNAを、一文字までバラバラにするもの」と思っていただければ大丈夫です。

最初のたとえなら、「背骨がある」という文章を「せ」「ぼ」「ね」「が」「あ」「る」になるまでバラバラにします。その他にも不要な情報をバラバラにして、「岐阜県在住」とか「臨床検査技師」という部分だけを残せば、「あ、『岐阜県在住』という文字がみつかったよ。だったらドンドンコピーしよう!!」となるわけです。

 

 では、なぜPCR検査を見境なく行ったら医療崩壊につながるのか?

その解説は次回にて。