上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

リメイクの願いが叶う頃

 世の中には疑問符が付く続編やリメイクが多数存在します。

 

 任天堂信者的には「スターフォックスアサルト」や「黄金の太陽 漆黒なる夜明け」、「ファイアーエムブレム 暁の女神」辺りは挙げざるを得ないですが、この手の不満は、人それぞれ多数存在しているでしょう。「FF7リメイク」なんかも評価が割れているし、FFファンの友人も「FF10ー2は蛇足だった」とこき下ろしていました。「テイルズオブシンフォニアHD」とかも、任天堂信者はおろかゲームファン全体に喧嘩を売っているレベルの劣化移植ぶりでした。

 アニメにもそういう話は多く、僕が観たことあるアニメでは「ぼくらの」みなみけおかわり」は、やっぱり酷かったエヴァはマジでもういいですが、中でも腹が立ったのが「ハクション大魔王2020」です。

 「ハクション大魔王」は小学生の時に再放送していたのを観ていたので、それなりに思い入れというか、やっぱりタツノコプロを代表するラップスティックコメディの名作であるという思い出があったので、何気に楽しみにしていたのですが、どうもアクビちゃんのキャラデザで力尽きてしまったらしく、お仕事紹介アニメに成り果ててしまうとは思っていませんでした。更には、「100年間は魔法の世界に封印されるため、かんちゃんには二度と会えない」という、ギャグアニメにあるまじき涙腺崩壊の最終回だったのに、まさか50年後にかんちゃんと魔王、アクビちゃんが再会するとは!あの涙無しでは語れない最終回は、一体何だったのでしょうか!!

 そもそも「近年のタツノコプロは制作能力が下がってしまった」と言われるように、多分、2004年の「CASSHERN」辺りから明らかに迷走を初めてしまい、「ガッチャマン」や「タイムボカンシリーズ」を生み出し続けたあのタツノコプロは一体どこへ・・・といった感じでしたが、ハクション大魔王の、過去の勢いは到底感じられない出来には本当に落胆しました。

 

 まあ、「過去の作品を現代によみがえらせる」というのは、そう簡単ではないとは思います。スタッフも時世も「過去」ではなく、権利関係の問題も絡む場合があります。仮に現在考えられる中で完璧な制作体制があったとして、過去の作品が好きだった人の大多数を納得させられる、喜ばせる作品を作ることは難しいでしょう。仮にFCの「ドクターマリオ」をSwitchの性能をフル生かして、「色んなアイテムを、グラフィックを、連鎖したら『猫ふんじゃった』のリズムと一緒に『ば~よえ~ん』とかのボイスを・・・」とかやっていたら、それはドクターマリオぷよぷよと何かが合体事故を起こした何かであってドクターマリオではありません。

 近年は、過去IPの掘り起こしが盛んですが、続編やリメイクを作る際は、作り手には「最新の技術や手法を投入すれば面白くなるわけではない」という事を念頭に入れていただき、受け手も「別物になってしまう可能性は極めて高いのだから、過度に期待してはいけない」という事を念頭に入れないといけないと思います。

 

 さて、有り難い事に、ゲームにしてもアニメにしても、ある程度メジャーな作品や権利関係が複雑でないものは、配信等の形で、ある程度安価で原作のまま楽しめる環境が整っていますが、そうもいかないのがボードゲームです。複製や配信の方法が確立しているゲームやアニメと違って、ボードゲームはモノが必要です。それに権利関係もあるので、一度販売が終わってしまうと、少なくとも新品で手に入れるのが極めて難しくなってしまいます。

 現在は継続して販売されているボードゲームも大分増えてきて有り難い限りなのですが、正直、僕が定価で購入したボードゲームの中にも、販売終了でプレ値になってしまったものも多いです。そのため、過去のボードゲームが欲しい時は、再販を待たなければいけないのですが、再販の際、版権が別の会社になってしまうことも珍しくありません。

 個人的に疑問符が付いたのが、「スカウト」です。

 初版は「ワンモアゲーム」が販売していたのですが、のちに「オインクゲームズ」に権利関係が移ったらしく・・・

 しかも、ワンモアゲーム版はまるっきりノンテーマだったのが、オインクゲームズ版では「サーカスの団員を集める」という、フレーバーがついていました。

 いや、大富豪みたいに基本手札を無くすゲームなのに、「仲間を集める」っていう設定ってどうなの?とは思いましたが、そこはオインクゲームズ。カード自体は何とか無味無臭なテイストを維持していました。

 

 さて、アナログゲームの中でも一大ジャンルである「トリックテイキングゲーム(以下トリテ)」は、その指向性の多様さから、「最高傑作」が複数あるジャンルでもあります。トランプを使うシンプルな「ハーツ」やビット数の読みが肝心な「スカルキング」、手札のマネジメントに神経を使い続ける「5本のきゅうり」等、それぞれ、トリテの要素に特化した名作なのですが、その「最高傑作」の一つとして、「テキサスショーダウン」も挙げられます。

 「テキサスショーダウン」の魅力は、何といってもコンポーネント。3枚のカードが弾丸で打ち抜かれるているそのイラストと「ショーダウン」という名前から想像するのは、西部劇のワンシーン

 タンブルウィード転がる砂を固めた道の上、カウボーイファッションに身を包んだ漢たちが互いに銃を向け合う。彼らの目的は金か酒かはたまた女か、空高く打ちあがるコインが木の床に落ちた音がした瞬間に放たれる弾丸。その場での善悪は、相手より早く引き金を引いたか否かのみ。

 命の価値など今を生きている僕たちには想像もつかないほど軽い殺伐とした雰囲気のなか、繰り広げられる命のやり取りを感じられます。

 そんな緊張感溢れるコンポーネントに反して、ルールは至極シンプルでとっつきやすく、「もう一戦もう一戦」とついつい遊んでしまう中毒性があります。

 そんなテキサスショーダウンですが、長らく入手困難な状況が続けていました。どこの通販サイトへ行ってもプレ値の中古品があるのみ。それすらも出品と同時に売れてしまうので、到底手が出せる代物ではありません。ボドゲカフェやボドゲ会に置いてある「入手に苦労した」テキサスショーダウンを、「汚さなように、折り曲げないように」と別の意味で緊張してプレイしていました。頼むから、スリーブに入れてくれと。

 そんなテキサスショーダウンが、遂に、遂に再販が決定したのです!!当然、ボドゲ仲間は皆即予約。僕も急いで通販サイトを覗いたのですが、そこに表示された商品画像が・・・

 ・・・ゑ?

 確かに、版権が他社に移ったというのは知っていました。新ルールも追加されているようですが、テキサスショーダウンのルールでも遊ぶことができます。

 なのですが・・・いや、なんだろう?このコンポーネントは?

 確かに、何の気兼ねもなくテキサスショーダウンをプレイ出来るのは素晴らしい。手元に、テキサスショーダウンが遊べる環境があるのは素晴らしい。

 でも、でも確かに感じる、「コレジャナイ感」

 テキサスショーダウンはもっと殺伐としているんだよと、あくまで人間対人間の「ショーダウン」なんだよと、なんでスカルキングのような、天災の押し付け合いになっているんだよと。

 

 確かに過去の作品をリメイクするに当たって、当時にはない、様々な制約があるのは理解しています。その上で、こういったコンポーネントになってしまうのも、非難してはいけない事であると理解はしています。

 テキサスショーダウンさえ遊べれば、それでいい。受け手として、消費者として、ボドゲ愛好家として、こういったリメイクは非常に有り難い。むしろ天にも昇る気持ちです。

 でも、でも、敢えて書きたい。

 元の方がよかった

 と。

 

 まあ、予約したけど。