上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

遠い日の(放課後電磁波倶楽部の)記憶を

 最近週1で拝見しているせいか、個人的には東野幸治氏は吉本芸人の中ではかなり面白い芸人だと思っています。なんか僕好みの毒のある笑いが持ち味というか、あと所謂「大物先輩芸人」と言われるダウンタウンとかより面倒見よさそうだし。
 そんな東野幸治氏の発言で結構印象に残っているのが、「あらびき団」でのコメントで「いいか、お前ら人を笑かしたいとか言ってるけどな、お前らは笑わせとるんやない!笑われとるんや!」です。その時は膝を打つコメントでしたが、「笑われる」にあまりポジティブでは無いように聞こえます。しかし、後年の「やりすぎコージー」の都市伝説スペシャルで、「東野氏に関する都市伝説」と称して、「デビュー当時芸風に悩んでいたふかわりょう氏の話を聞いた後に一言、『君は笑われなさ~い』。そこからふかわ氏は独特のスベリ芸を確立した」というエピソードがありました。
 「笑われる」をポジティブにとらえていようといまいと、東野氏は「笑わせる」と「笑われる」にはハッキリとした違いと大きなかい離があり、それは「笑い」というものを生業とする上でのスタンスに大きな影響を与えることを、理念としていることが分かります。

 実は「鋼の錬金術師」って今では好きなマンガですが、連載当時は一切触れませんでした。と言うのも、僕は任天堂原理主義者でハガレンの連載は少年ガンガン・・・もう分かりますね。友達からは「もったいない」と言われていましたが、いや、今から思えば本当にもったいなかったです。まさかこの年になってから「化学屋」兼「アマチュア占い師」になってしまうとは・・・
 で、今日のニュースになったのが「悲報:実写版鋼の錬金術師の1シーン、ファンのコスプレにしか見えないと話題に」。僕も画像を見ましたが、まさに未来について語るロイ・マスタング大佐とそれに一口のる在りし日のマース・ヒューズ中佐・・・ではなく、完全に「アメストリス軍のコスプレでロケの合間に散歩しているディーンフジオカと佐藤隆太だなコレ」でした。そもそもパズドラのコラボガチャの一発でヒューズを引いて大喜びする僕は佐藤隆太の演技力に非常に疑問を持っているわけでありまして、そんな人がそのヒューズを・・・ああああああああああ!!原作を知らない人がヒューズの魅力はこんなモンだと思ってしまったらどうしよう!!
 所謂マンガやラノベの実写化というのは、小説と違ってキャラクターデザインの比重が大きいためどうしても賛否が分かれる事になります。以前もうpしましたが、それにしても映画会社は、今まで実写化しては爆死したマンガ作品がいくつあると思っているのやら。「ハリポタ」や「マーベルシリーズ」等のハリウッド映画は流石と言うべきか、一見非現実的なシーンもお金をかけたCGやらセットやら培ってきた特殊技術で再現してしまいます。そもそもアメコミって昔の劇画みたいだし、マンガが原作だからといって決して手もお金も抜かないハリウッドはやっぱり違うのです。ドラゴンボール?なにそれ日本だってそれ相応のお金はかけているはずなのに、一体お金はどこに消えるのやら・・・
 では日本製で成功した実写化映画はどういった共通点があるのか?
 最近では「銀魂」がありますが、これに関しては一目瞭然。銀さんもパッつぁんも完全にコスプレ、神楽に至っては似せる気があるのかも若干怪しいレベルですが、アニメでも物議を醸したカウ〇トダウ〇TVのパロから始まる関係者全員丸坊主上等・原作知らない人お断りの怒涛のギャグで乗り切るという、「笑われる」ことを突き詰めて徹底的に視聴者の腹筋を殺しにかかることで乗り切りました。「デトロイト・メタル・シティ」なんかも同じです。松山ケンイチはある意味正統派優男の根岸君も、某閣下(ちなみに世を忍ぶ仮の姿で早稲田大学を卒業されている)の出来損ないみたいなヨハネ・クラウザー3世も演じ切れるのか!と思いつつ、あくまでギャグだから許される展開、根岸君もクラウザーさんも作品世界からかなり浮いた見た目のキャラクターだけど「ギャグだから」の一言でそれらは「ギャグを構成する一要因」になり批判の対象にはなりません。
 こうしてみると、実写化というのは「笑われる」事を前提に作る必要があることが分かります。特に服とか武器とか異形の生き物とか、何かしら現実離れした要素を再現する場合、スターウォーズみたいによほどお金をかけて再現しない限り、「笑われる」事が確定すると言っても過言ではないでしょう。だったら徹底的に笑われる方が潔いというものです。変態仮面みたいに。
 しかし鋼の錬金術師は、重要な設定にことごとくシリアスな部分が絡んできます。例えば、最重要設定である兄弟が禁忌を犯すシーン。あれ下手にお金をかけるとR-12とかでは済まない悲惨な描写になるし、もし安普請なら原作ファンどころかそれこそ一見さんですら「復讐だ!!」になりかねません。そもそもあのシーン子役にやらせるの?でも山田涼介がやったらそれこそ観客全員がキング・ブラッドレイになるし・・・他にもタッカー(出るんだ!?)なんか絶対ギャグにはできないし、そもそもなんでハクロ将軍が小日向文世なんだ!?小日向文世はヨキ確定だろ!?・・・っていうか傷の男は!?ハクロ削ってでもヨキと傷の男は出すべきでしょう!!ロイに至ってははミッチー以外認めんっ!!!
 もちろん原作には荒川弘病んでるの?と思ってしまうメリハリのある「笑わせる」ギャグ描写も多くシリアス一辺倒ではないのですが、「鋼の錬金術師」自体は「笑わせる」ことはしても「笑われる」ことが絶対に許されない物語であり、そこを蔑ろにされるということは「ハガレン」としての価値を投げ捨てることになるのです。「笑われる」ことが許されない物語を「笑われる」ことが確定する実写映画にするという、「デビルマン」「ガッチャマン」の後に続け!としか思えない所業を、真理(とかいてマリと読む)は何を対価とするのか?もう公開が不安でしかありません。試写会の大不評が何か、それこそ真理の軽いノリの冗談だと思いたいものですが・・・

 「ようこそ、怖いもの見たさのバカ野郎」