上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

エヴァと「セフィロートの樹」:1

 エヴァンゲリオンのOPでミサトのシェルエットと共に登場したり、26話で初号機と量産機のATフィールドの解放によって形作られたのが「セフィロートの樹」(一般的には「生命の樹」という名前ですが、同じくOPの「しょーおーねーんーよ」の辺りで出てくるのも「生命の樹」と言われるので、それを区別するためにエヴァ界隈ではこう呼ばれています)。
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 物語の名前からして「エヴァンゲリオン(福音)」なので旧約聖書ユダヤの魔術思想「バカラ」とも関係が深いのですが、その中でもこのセフィロートの樹はアニメ内の様々な場所に意匠が確認できます。では、具体的に物語の中でどのような意味を持っていたのでしょうか?

 そもそもこのセフィロートの樹、バカラの世界では「世界そのもの」を図案化した曼荼羅のような意味と、丸い部分を双六みたいにワンステップずつ進んでいくことによって「霊的に進化できますよ」という「悟りの開き方」のような意味の2つがあります。ネルフやゼーレは「人類補完計画により肉体を捨てる」ことをとりあえず目標にしていたので、物語内の中では後者の意味合いで間違いないでしょう。
 さて、「悟りの開き方が判っているのなら楽勝やん?」と思ったあなたは甘~い!確かに上の図の下から上へ登って行けば霊的に進化できるとなっていますが、それはまだ序の口、バカラの世界観では、神様の国の下に4つの世界があり、それぞれにセフィロートの樹が存在します。上から、「火が司る意志の世界」「風が司る知性の世界」「水が司る情緒の世界」「土が司る活動の世界」であり下に行くほど程度が低いとされています。そして我々の世界は一番下の「土が司る世界」。土は「物質」を意味しているので、物質に囚われた程度の低い魂を持っているも同等。そんな魂がたとえ「この世界の」悟りを開いたとしても、あと3つの世界を渡り歩かないといけないのです!!
 これとエヴァのお話と何の関係があるんだって?では今回は26話のお話を。
ロンギヌスの槍に貫かれて「生命の樹に還元された」初号機をさして、ゼーレは「赤き土の禊」と呼んでいました。つまりエヴァの世界も「土が司る世界」です。
 セフィロートの樹に導かれたリリスは初号機を取り込み、力の全てをシンジに託します。そしてシンジは、他人がいるから傷つく→だったら他人も自分も無くなっちゃえ!と一旦決断することでリリスは人類を霊的進化させることを決める・・・という流れですが、その霊的進化によって何が起こったか?人類が全てLCLになりましたね。
 肉体=物質がLCL=水になる。つまり旧世紀版においてセフィロートの樹は「土の世界」から「水の世界」への進化を表しているのです。
 延々と講釈並べて結論はたったの2行かいっ!ってなりますよね。でも全体的に難解なエヴァの物語の構造を、マクロに俯瞰するのには訳に立ちます。そしてこの「物語の俯瞰」は、新劇場版で大いにその真価を発揮するのです!!

つづく