上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

エヴァとセフィロートの樹:3 タイトルの色

 さて、前回「ヱヴァンゲリヲン新劇場版の世界では、暖色系→下位の世界寒色系→上位の世界である」という考察をしました。

 さて、この「色」の違い、どこかで見たことがないでしょうか?

 そう、「タイトル」です!

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

 シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇

 

 と、多かれ少なかれTV版に準じた展開だった序・破と、独自の展開を見せたQ・𝄇で色が暖色系と寒色系にハッキリと別れています。「タイトルの色が赤→オレンジから急に青に変わるのが少々不自然だな」とは思っていましたが、これに「エヴァセフィロートの樹考察シリーズ」と、FGOとボドゲカフェにハマったせいでいつの間にか𝄇の公開まで2週間を切っていたのでついでにエヴァお馴染みの「あの要素」も一緒にして考察していきたいと思います。

 

 簡単に言えば、新劇場版の4作品は、それぞれ

序:土が司る活動の世界←アッシャー

破:水が司る情緒の世界←イェツィラー

Q:風が司る知性の世界←ベリアー

𝄇:火が司る意志の世界←アツィルト

 
を表しているのではないでしょうか?
 初めにも書きましたが、セフィロートの樹は「人間が到達可能な上位世界」を表しています。つまり、序→破→Q→𝄇と進むたびに、「上位世界」へと足を踏み入れているのです。
 誰が?
 勿論、主人公たる碇シンジです。
 
 何もこの説、適当や妄想の類で書いているのではありません。
 これはシンジの言動の変化から容易に読み解くことができます。
 シンジは劇中で、何度も「エヴァに乗りたくない」と言いますが、その「乗りたくない理由」というのは、「劇場版ごとに変わって」います。
 
 序
 「怖くて怖くて、でも逃げる事も出来ないんだ」
 ミサトさん「危険なのはあなただけじゃないのよ」
 「(不承不承ながら)もう一度、載ってみます」
 
 破
 「友達が傷つく」←友達が傷つかないなら乗る?
 マリ「使徒が零号機を取り込んだんだ、君も逃げなよ」
 「僕はエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!!」
 
 Q
 「君が見せたじゃないか!赤く染まった、どうしょうもない世界を」←世界がそのままだったら乗る?
 カヲル「ロンギヌスとカシウスの2本の槍を使えば、世界の再生も可能だ」
 マリ「少しは世間を知りなさーい!!」
 
 と「そもそも物理的に乗りたくない→乗ってもみんなを助けられないから乗りたくない→乗っても世界が滅ぶことを知ってしまったから乗りたくない」と、活動的な理由→情緒的な理由→知ってしまったことによる理由と、まるで4大元素における土→水→風の要素を含んでいるように変化しているのです。
 まああとは、こじつけかもしれませんが、
破では
ベタニアベースが海上にある
海上使徒が出現する
海洋生物研究所のシーンが追加されている
第8の使徒を倒した後に、液状化した使徒による洪水の被害のシーンが長く流れる
といった、映画の限られた時間の中で水に関するシーンが矢鱈多い、
Qでは
空中戦が多い
強い風が吹くシーンが多い
音楽が重要なファクターになっている
といった、風や空気に関するシーンがグッと増えています。
 
 また、Qのラストの、カヲルが死ぬ直前、「いつか自分の事も書き換えていくんだ」という、分かるような分からないようなセリフも、「経験を通した考え方の変化」(奇しくもカヲルの次のセリフ「ごめん、これは君が望む幸せじゃなかった」でも察することはできます)という、普遍的なものと「シンジよる世界の更新」の二つの意味が込められていると考えると、幾分スッキリするのではないでしょうか。
 Qでのシンジは「自身に世界を更新する能力がある」ことを知ってしまいます。
 そして序や破では、一切言及はされませんでした。
 つまり、序や破では、シンジにとって「下位世界の出来事」であり、それぞれ「活動的」な部分や「情緒的」な部分を克服することによって、「セフィロートの樹における課題」をクリアすることにより、より上位の世界へと知らない間に更新していった、そしてQでは「知ること」により、「自発的な更新」を目指すようになったのです。
 
 そして、𝄇の展開もある程度予想がつくものになります。
 シンジは「誰かに言われて世界を元に戻す」というQの出来事を体験して、最後の火の要素である、「自身の意思による世界の更新」を目指す展開になるのではないでしょうか?単純に「世界を元に戻す」のではなく「こういう世界を目指すべきなのだ」という考えに至ると。単に、独裁的・独善的な思考ではなく、旧劇場版でも見られたような、「他者がいる世界」を肯定することで、「もう一度会いたいと思ったから」と思い得られる世界観を目指すとか。
 もし間違っていたら桜の木の下に埋めてもらっても構わないよ!!
 
 さて、そんなわけで、大体予想はついたとは思いますが、「エヴァではお馴染みの要素」である、「パターン:青」について、まあ、ぶっちゃけて言えば使徒ってのは、人間から見て「上位の存在」であり、それと対をなす「パターン:オレンジ」ってのは「下位の、人間と同じ階層の存在」であると。それで、旧劇場版においてリリスがパターン:青とされながらも、マコトが「いえ!ヒト!人間です!!」と叫んだのも、もともと使徒と同一でありながらも、人同士の交流によって「人間」と呼べる存在になれる(人の「間」だからね)という、作品世界での「絶対と思われていた概念を超える可能性」を示したものなのではないか・・・と。まあ、今更な感じではありますけど。
 
 1年以上ぶりにエヴァ考察のブログを書きましたがいかがでしたでしょうか?不備がある所や疑問点、「いや、これは解釈違いだ」と思われるところがあったら、ドシドシコメントお願いします。
 

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