上杉アイクの机上で空論

独特の感性で森羅万象を考えます

どこまで許される? 秋元康編

 「真の最終回はHuluで」で目下大炎上中の「愛してたって、秘密はある」。あの秋元康氏が関わっていたせいですっかり「阿漕な商法」となってしまった訳ですが、ぶっちゃけこのような騒動は初めてではありません。
 新しいところでは、世界にとって迷惑な存在の伊丹ライバルをやっとこさ倒したと思ったら世界の破壊者になってしまい「続きは映画で」で大騒動になった「仮面ライダーディケイド」。ヒロインの事が好きなヒロインがヒロインに「あのね」と話しかけたところで終わって「続きはDVDで」でやっぱり炎上した「かしまし ガール・ミーツ・ガール」といった事例があります。しかし前者は「最終回はヒロインが第一話で見ていた夢」という公式アナウンスがありあくまで映画は「番外編」という建前、後者も一応話は完結した状態であり、DVDによる「真の最終話」はやっぱり「番外編」ということになりまでした。
 古いところ、というか「最終回は映画で」の流れで無視できないのが「新世紀エヴァンゲリオン」でしょう。「ヒロイン2人が立て続けにリタイア、ロボットの中身はおかーさん、住んでいた街は壊滅」といった怒涛の展開の後に「自己啓発セミナーで終わったと思ったら完結編を映画でやります」という画期的なアニメにファンも「庵野死ね」の電凸で応えました。もっとも、本来春に「AIR/まごころを、君に」を夏に「その後を描いた完全新作」を上映するところを制作が遅れて完全新作は破棄、夏エヴァは「人類ポカン計画」になったところを見るに、TV版がニッチもサッチも行かなくなってブン投げたのは想像に難くありません。アニメ制作は計画的に。それ以前の「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」は総集編を映画にすることで人気に火がつきましたし、「伝説巨人イデオン」も「続きは映画で」でしたが、この3作品はTV放映中のマーチャンダイジングがうまくいかず、放送期間短縮の憂き目にあった上での映画でした。

 ここで注目したいのは、「映像ソフトの売り上げ」。日本映像ソフト協会によると、
単純に比較できるわけではないですが1998年が谷となり、2005年当たりで過去最高でした。注目すべきはその後、2006年からガクンと下がっています。
 TV番組は基本「タダ観」です。でも番組を作る、もっと言えば「制作会社」や「TV局」、そこで勤めている人たちが儲かるようにするためにはお金が必要です。なので基本的にお金がある会社などにスポンサーになってもらい、お金を出してもらう代わりに適宜CMなどでその会社を宣伝します。
 しかしエヴァのヒットの後の1998年以降、特にアニメで顕著なのですがTVアニメやドラマというのは「スポンサーの宣伝の場」から、それに付随して「映像そのものを売る」事が重要な収益となっていきました。特にDVDという安価でお手軽なメディアが登場したことでマーチャンダイジングが成立せずスポンサーもあまりつかない深夜アニメにとって、DVDの売り上げは正に制作会社にとって命綱となりました。2006年当たりになると、不況で所謂全日帯アニメやドラマもDVDやブルーレイの売り上げも重視するようになりましたが、折しも違法アップロードやバッタモノソフトによって売り上げは右肩下がりという状況になりました。
 
 このあたり、CD、出版不況やマジコン騒動も原因は似たようなものだと考えています。PCによって簡単に複製や違法うpができ、それを簡単に利用できる状況、アニメやドラマに限らず、音楽やゲームといったデータ(情報)化できるものは、情報に対する価値がだんだん低くなっているのです。
 例えばイメージとして、30分のアニメ1本を製作するのに2000万円かかるとします。景気がよくアニメ自体の放送数が少なかった時は、スポンサーからのお金で全てまかないお釣りも出ていました。しかし1998年くらいでアニメの数が爆発的に増えるとスポンサーから1500万円くらいもらって放送可能なアニメを作り、残り500万円の人件費のような費用はDVDのような映像ソフトを1本5000円で売らないと回収できなくなりました。映像ソフトによって何らかの方法、たとえばレンタルでみんなに使いまわされる、ダビングやコピーによってみんなに見られると、当然「ソフト1個を売っても、下手すればそれを1万人2万人に共有されてしまう」現象が起こり得ます。そうなると1個のソフトを1万人の人がお金を出し合って買われる、もっと言えば「1個ソフトを1万等分して各人20銭だけを支払っている」ようなものになってしまうのです。その環境で500万円を回収しようとすれば、数字上1000個売ればいいのに、実質「1千万人の人が観たいアニメ」にしないといけません。
 さらに悪いことに、現在のTV番組自体が、録画してしまえばライセンス上(合法的に)「10等分」できて、おそらく違法ツールを使えばほぼ無制限にコピーできてしまいます。しかも番組編集で本来大切なお金をもらえるCMすら飛ばすことが可能になっているのです。こうなると「視聴者は1銭も払っていないくせに映像ソフトすら買ってもらえない」という事になります。

 こうなるとお金を回収するには、「一人ひとりが確実にお金を払って観てもらう」ようにするしかありません。それが「映画」であり「Hulu」といった動画サイトでの配信なのです。
 つまり今回の騒動は「続きを映画で」、人気ドラマの「番外編を有料動画サイトで」の発展系であり、起こるべくして起こった出来事と言っても過言ではないでしょう。
 
 以前、確か「めちゃイケ」だったと思うのですが、岡村が「(このまま規制が進んでしまい)テレビがニュースと通販だけしかやらなくなったらどうする?」と矢部に問いかけていました。尚、矢部は「それでも観るけどな」とのことですが、そこまで極端な事になならないにせよ、例えば今のニコ動アニメの「1、2話無料」みたいにTVのアニメやドラマがただのサンプル視聴になったり、すでに「スポーツ中継が専門のチャンネルや動画サイトでしか満足に視聴できなくなっている」ような事がアニメやドラマにも広がる可能性があるということです。今はどちらかといえばファン向けのコンテンツですが、それが「ドラえもん」や「サザエさん」や「アンパンマン」、「相棒」や「日曜ドラマ」のようなお馴染みのもの、親しまれているもの、みんなの財産と呼べるものまで「お金を払わないと観れません」となってしまうのは流石に悲しいではありませんか。

 もっとも、これを機にHuluに入ってみたり、民放や独立局などがみんな共同で定額制の動画サイトを作ってみてもいいかもしれません。スポンサーや芸能事務所の縛りが緩いドラマや、思いっきり作家性を追求したドラマを観るのも楽しいでしょうし、日本ドラマは最低の放送期間は保障されるので安心して観ることができます。

 これは音楽や出版物、ゲームにも言えることです。「無料じゃないとイヤ」という気持ちは理解できますが、それがAKB商法を招き、不幸な作家を量産して、DLCやガチャの地獄を生み出し、何より企業のブラック化を加速させてている事を忘れてはいけません。
 娯楽にはちゃんと適切なお金を払いましょう!文句を言えるのはその後なのです!!

 でもソニーには一銭も払わん!!
 

 音楽を違法ダウンロードするサイトもあるけど、ウイルスに感染しても知らないよ~だ(経験者)